JIOS抄読会レポート
保定装置の選択と効果 〜文献的知見と現場の声を交えて〜
矯正治療後の後戻りを防ぎ治療結果の長期的安定を維持する「保定」は、単なる“治療後管理”ではなく矯正治療の重要な一工程として再評価されています。
2025年6月17日(火)に行われた日本包括的矯正歯科学会(JIOS)抄読会では保定装置に関する最新の文献を基に、複数のドクターによる臨床的意見を共有しました。
文献レビューより:保定装置の現状と課題
以下は抄読会で取り上げた文献内容とその考察の要点です。
🔹 使用傾向と装着指導の概略
- 上顎には可撤式(VFRまたはHawley)、下顎には固定式(Fix)の併用が一般的
- 保定初期は1日20時間以上の装着を指導し、半年〜1年後より夜間装着へ移行
- 保定期間は9か月〜2年が目安とされ、以降は症例に応じ調整
🔹 各装置の特性比較
| 装置名 | 特徴 | 主な利点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| VFR(真空成形) | 透明・審美性 | 快適・技工所不要 | 劣化・咬合接触減少 |
| Hawley | ワイヤー+レジン | 咬合接触回復・調整可能 | 審美性に劣る |
| Fix(固定式) | 前歯裏に接着 | 装着率確保 | 清掃困難・歯石形成リスク |
🔹 エビデンスの要点
- 可撤式と固定式に保定効果の大差なしとの報告あり
- 固定式は長期安定性に優れる傾向がある一方で、清掃不良が問題となることも
- VFRは2年以降の破損率が高く、長期使用には向かない可能性も
- 咬合接触を重視する場合はHawleyが有利との報告も存在
臨床医の声:保定は症例別に再設計されるべき
抄読会に参加した歯科医師の見解から、以下の点が共通の合意事項として浮かび上がりました。
✅ 共通点
- 最低2年の保定期間を全員が支持
- 固定式は後戻りリスクが高い症例に優先的に使用
- 保定は「矯正治療の延長」として患者に明確に説明するべき
⚠️ 相違点
- リテーナーの種類選定(VFR派/Hawley派)
- 使用時間指導の厳密さ
- リコール頻度やフォローアップ体制
臨床応用の示唆:標準化ではなく「症例別設計」を
保定装置の選定において、画一的なプロトコルに頼るのではなく、以下のような個別要因の考慮が不可欠です:
- 不正咬合の種類と治療内容
- 補綴計画や咬合力の程度
- 患者のコンプライアンス・清掃能力・ライフスタイル
- 舌癖や口腔習癖の有無
保定は治療結果を維持するだけでなく、長期予後を左右する鍵を握っています。
今後もJIOSでは、文献レビューと臨床の知見を融合させた抄読会を通じ、より質の高い矯正医療の実践をサポートしてまいります。
【2026年第1回例会詳細】
テーマ:矯正・補綴について
開催日程:2026年5月31日(日)10:00〜17:00
会場:野村コンファレンスプラザ日本橋5F大ホールB
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【2026年第2回例会詳細】
テーマ:Ortho-Perioについて
開催日程:2026年8月30日(日)10:00〜17:00
会場:野村コンファレンスプラザ日本橋5F大ホールB
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【2026年第3回例会詳細】
開催日程:2026年11月29日(日)10:00〜17:00
会場:野村コンファレンスプラザ日本橋5F大ホールB
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