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2024.07.11

矯正治療における智⻭の影響


智⻭(第三大臼⻭)の抜⻭が下顎前⻭の叢生、⻭周病、齲蝕にどのような影響を与えるかを 過去の論文を参考に検討した。

1. 下顎前⻭叢生との関連性

智⻭は通常、矯正治療には直接関与しないが、治療計画において重要な位置を占める。2/3 以上の矯正⻭科医と口腔外科医は、未萌出の智⻭が下顎前⻭の叢生を引き起こすと信じて おり、スウェーデンとアメリカの矯正⻭科医の間で、智⻭が下顎前⻭の叢生を引き起こすことに対する意見が異なるとされる。 

システマティックレビューでは、一部の研究では智⻭が前⻭の叢生に対してメジアルフォ ースを発生させると示唆しており、他の研究では智⻭の抜⻭後も前⻭の叢生に影響を与えないと報告している。全体的に、智⻭の存在と前⻭の叢生との間に明確な関連性は確認されなかったとしている。 

このように、智⻭の存在が前⻭の叢生に与える影響は一貫しておらず、他の要因、例えば⻭冠のサイズ、顎の成⻑、年齢、性別なども前⻭の叢生に影響を与えるとしている。 バイアスリスクが高い研究が多く、結論を一般化することには慎重である必要がある。智⻭と叢生との関連性を明らかにするには、更なるランダム化比較試験が必要である。研究の多 様性と評価の不一致が結果の解釈を困難にしていると考えられる。

2. ⻭周病・齲蝕への影響

智⻭の存在は、特に隣接する第二大臼⻭に対する⻭周病リスクを増加させる可能性があるが、齲蝕に対する影響は明確ではない。智⻭の存在自体が齲蝕リスクの増加に直接関連する という確証はないが、智⻭が⻭列に存在することで、適切な⻭磨きが難しくなり、齲蝕のリスクが間接的に増加する可能性がある。患者ごとの状態やリスクを考慮し、智⻭の抜⻭や保 存を判断することが推奨される。

3. 抜⻭のリスク

智⻭の抜⻭には様々なリスクが伴う。以下に例を挙げる。

  1. 遅発性感染症(DOI)
  2. 感染リスク
  3. 神経損傷
  4. 術後の疼痛、腫れ、開口障害 

特に感染症や神経損傷のリスクは高く、適切なリスク評価と予防措置が重要である。予防的抜⻭の実施については、患者個々のリスクと利益を慎重に評価する必要がある。

東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科包括CLINIC  高橋 侑嗣

参考文献)

Stanaitytė R, Trakinienė G, Gervickas A. Do wisdom teeth induce lower anterior teeth crowding? A systematic literature review. Stomatologija. 2014;16(1):15-8.

Lyros I, Vasoglou G, Lykogeorgos T, Tsolakis IA, Maroulakos MP, Fora E, Tsolakis AI. The Effect of Third Molars on the Mandibular Anterior Crowding Relapse-A Systematic Review. Dent J (Basel). 2023 May 9;11(5):131.

Ghaeminia H, Nienhuijs ME, Toedtling V, Perry J, Tummers M, Hoppenreijs TJ, Van der Sanden WJ, Mettes TG. Surgical removal versus retention for the management of asymptomatic disease-free impacted wisdom teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2020 May 4;5(5):CD003879.

Zhang Y, Leveille SG, Edward J. Wisdom teeth, periodontal disease, and C-reactive protein in US adults. Public Health. 2020 Oct;187:97-102.

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